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完全犯罪を達成した博士 3

 ※初めて見る方は初めから読んでください。前回分はこちら→ 完全犯罪を達成した博士 2

 ターゲットは決まった。名前は前田幸一。これで第二段階に進める。
第二段階はターゲットと直接会うことから始める。
私は事前調査で分かっていた前田の行きつけのバーに向かった。
前田に行きつけのバーがあることは、私にとって好条件であった。
バーは他人にいきなり話しかけられても仕方か無いという、バー特有の雰囲気があり、
むしろ無関係の他人と一夜かぎりの腹を割った話をしたいと思い、来店する客も少なくない。
彼に疑われたらアウト。バーは前田に近づく最適の場所なのだ。
 
 私は前田行きつけのバーに開店10分前に着いた。
ドアをそろりと開けて、
「あ、まだでしたか……」
私は店のドアに掛かった、準備中の看板に気づかなかったふりをした。
すると中にいたマスターが、
「どうぞ、どうぞ。ちょうど開店の時間ですから」
と私をカウンター席に通す。
「じゃあ……この店のおすすめをくれますか。値段は気にしませんから」
“おすすめ”はバー自体にほとんど来たことのない人間か、
この店に来るのが初めての人間が良く使う単語である。
「少し高いですが、これなんかどうです?」
マスターは一杯のウイスキーを私の前に置いた。
このウイスキーの銘柄が何であるかなど関係ない。
私は事が順調に運んでいることを確信しながら、ウイスキーをちびちびと飲みだした。
 
 もちろんこの店の開店時間は知っていた。
全てはマスターに違和感を少しでも残させないための演技である。
まるで偶然見つけたこの店にたまたま来店した客、という印象。
これが大切である。
この印象が、後に来る前田への私からの接触に、違和感を残させないのだ。
私が前田を待ち伏せていたということなど、微塵も思わないだろう。
前田がこの店に来なくなった時、私と話していたことなど忘れ去るはずだ。
 カランカラン。ドアが鳴った。来た……。
「前田さん、今日は早いですね」
マスターは笑顔で前田を迎えた。
……順調だ。
前田が毎週決まった曜日にここに来ることは調査済みだ。
私は前田に見向きもせず、
「同じものを、もう一杯」
とマスターに告げた。
前田は私と席を二つ空けて座った。
ウイスキーをちびちびと飲む私をちらりと見たが、気にもとめずマスターと喋り出した。
よし……。私のことを覚えていない。
私はタバコに火をつけ、ウイスキーを一気に飲みほした。


続きは近日アップ予定です

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テーマ: 連載小説 -  ジャンル: 小説・文学
by コジン  at 11:32 |  完全犯罪を達成した博士 (連載中) |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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